- 医療介入度の最も低い、つまりご夫婦の負担の最も軽いファーストステップ
- 正確に予測された排卵日に合わせて夫婦生活を持ち、妊娠を期待する方法
体・心・費用、あらゆる面でもっとも負担の少ない治療法
不妊治療の方法には、大きくわけて3つのステップがあります。妊娠に至るプロセスへの医療の介入度が最も低いファーストステップが、このタイミング法(タイミング指導)です。病院で正確に予測された排卵のタイミングにあわせて、ご主人との夫婦生活(セックスの機会)を持ち、自然妊娠を期待するという方法です。不妊原因となる明らかな症状がある場合には、問題点を補ったり、取り除いたりするための投薬治療などもあわせて行うことになります。
不妊治療と聞けば、体外受精などの高度治療がクローズアップされがちですが、ご夫婦の負担を考えれば、タイミング法は重要な治療法です。心にも体にも負担が小さいだけでなく、ほとんどに健康保険が適用されますので、金銭的にも最も負担が軽くなります。
この治療法は、単に夫婦生活のタイミングだけを指導するというものではありません。医師は、一連の経過の中で、卵胞はきちんと発育していて、本当に排卵しているのか、排卵時に十分な頸管粘液が分泌されていて、その中に精子が侵入できているのか、また排卵後の子宮内膜は十分に厚くなっているかといったことを、毎周期しっかり確認します。不妊原因になるようなトラブルが発生していないか、常に目を光らせていることが重要で、それではじめて本来の効果が得られます。
はじめの一歩は、医療の手を借りて、排卵日を正確に予測してもらい、夫婦生活のタイミングをしっかりあわせることから
- おおよその排卵予測
過去の基礎体温表から、おおまかに排卵が起こりそうな日を予測します。 - 卵胞サイズをもとに予測日を修正します
排卵誘発剤を使わない自然周期の場合は、 卵胞の直径が20ミリくらいになったところで排卵することが多いのです。 そこで、排卵予測日の3日程度前を目安に病院へ行き、超音波検査で卵胞のサイズを測り、それをもとに予測を微調整します。
※保険診療では、薬剤を用いない自然周期にタイミング法を行う場合の超音波検査は1回のみ、排卵誘発剤を用いた周期の場合は3回まで認められています。 - 排卵3日前に先遣隊を送り込みます
検査の結果、やはり3日後あたりに排卵が起こりそうだということになれば、その日に一度夫婦生活を持っておきます。万が一予測日がずれた場合にそなえて、条件がよければ女性の体内で数日間は生きている精子のほうを先に送り込み、卵管でスタンバイさせておこうという作戦です。 - ドクターが指定した日に夫婦生活を持ちます
できるだけ排卵直前になるように、ドクターが妊娠しやすい夫婦生活のタイミングを指定します。 - 排卵促進剤(hCG製剤)の注射で排卵を後押し(※排卵誘発剤を用いた周期)
排卵誘発剤を用いている周期には、夫婦生活を持つ日の前日に排卵促進剤(hCG製剤)の注射を投与します。 - 排卵確認&ヒューナーテスト(※排卵誘発剤を用いた周期)
夫婦生活をもった翌日に来院していただき、超音波で本当に排卵したかを確認します。また、ヒューナーテストで精子は子宮内に侵入できているかをみます。 - 黄体機能を調べます(※排卵誘発剤を用いた周期)
さらに1週間後の高温期中期(着床時期)に、着床や妊娠維持に重要な役割を果たす黄体ホルモンの分泌量を血液検査で調べます。同時に、超音波検査で子宮内膜の厚さが十分かどうかもチェックします。
不妊検査で、排卵障害など薬剤で解決できる問題が見つかった場合には、投薬治療を併用しつつ、不妊治療のステップを上がっていきます
排卵誘発剤
自然には排卵が起こりにくい、もしくは起こらない場合、または黄体の働きが悪い場合などに使います。
飲み薬/シクロフェニル製剤
もっとも軽い排卵誘発剤です。クロミフェン製剤にくらべれば、排卵誘発効果はそれほど強くありませんが、目立った副作用もありません。
飲み薬/クロミフェン製剤
軽い視床下部性の排卵障害や多嚢胞性卵巣(PCO)などに有効な脳に働きかけるタイプの排卵誘発剤です。従来より、広く使われてきました。ただし副作用として、頸管粘液が少なくなる欠点があります。
飲み薬/レトロゾール製剤
軽い視床下部性の排卵障害や多嚢胞性卵巣(PCO)などに有効な脳に働きかけるタイプの排卵誘発剤です。眠気などの副作用がありますが、大きな欠点がなく、近年、よく利用されています。
注射/hMG(FSH)+hCG療法
クロミフェン製剤やレトロゾール製剤で効果がなければ、注射タイプの排卵誘発剤(hMG製剤)と排卵促進剤(hCG製剤)を併用することがあります。
そのほか一般不妊治療で使われる薬
hCG製剤
hCGは、胎児の絨毛(やがて胎盤になる組織)から分泌されるホルモンで、卵胞の最終成熟と卵子の排出(排卵)を促す黄体化ホルモン(LH)に分子構造が似ていることから、排卵促進剤として用いられます。
カベルゴリン製剤
乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)の値が高いときには、排卵障害や着床障害を起こす可能性があるので薬で抑制します。
甲状腺ホルモン剤
甲状腺機能低下症の場合も、過多月経、無排卵、流産、高プロラクチン血症などの原因になるとされています。甲状腺ホルモンを補う必要がありますが、投薬量のコントロールが難しいため、専門医との協力のもとで行なっています。
漢方薬
体質、症状にあった漢方薬を処方します。体調を整え、妊娠の可能性を高めるためには有効です。