- 初期流産の原因の大半は、胎児自体の偶発的な染色体異常
- 2度続けて赤ちゃんを亡くしたご夫婦が希望される場合は、不育検査を行う
- 不育症の中には、流産や子宮内胎児死亡を避ける対策がとれるものもある
2度続けて流産された方でも、次の妊娠ではその約60%が無事に出産されています。検査で不育原因が見つかれば対策可能なものも
不育症と習慣流産~流産が起こってしまう理由~
すべての妊娠の10~15%は、自然流産に終わってしまいます。そのうち60~70%は赤ちゃん本人の染色体異常が原因で、妊娠のごく初期に起こります。胎児に原因がある流産は、残念ながら防ぎようがないのです。ただ、あくまでも偶発的なものですから、再び繰り返えされる可能性は低いといえます。
ところがまれに、流産や早産を繰り返してしまい、なかなか赤ちゃんを抱くことができないという辛い体験をされるご夫婦がいます。2回続けて流産する反復流産は、全妊娠の1%程度。これが3回以上続けての流産となると、わずか0.4~1%にまで減ることから、妊娠を継続しにくいなんらかの病的な問題が母親、もしくは父親、さらには母体と赤ちゃんの間にあるのではないかということで習慣流産と診断されます。
この習慣流産に加え、早産や子宮内胎児死亡などで、繰り返し赤ちゃんを亡くす状態を『不育症』といいます。今度こそ抱けると思ったわが子を繰り返し失うという体験は、堪えがたいものです。ましてやそれが不妊治療のすえに、やっとの思いで授かった子だったとしたら……、そのつらさは察するにあまりあります。
不育症検査
実は、学会でも何度流産したら『不育症』と定義するかは未だに決まっていません。とはいえ、防げるものなら手を打とうと、諸外国では2回続けて流産した時点で不育症として対処すべきという国が多く、日本でも反復流産の時点で不育検査を受ける夫婦が増えているといいます。とくに、胎児の心臓が元気に動いているのが確認された後(心拍確認後)に流産を経験している場合は、胎児以外に原因がある可能性も高いため、早めの検査を受けてみてもいいかもしれません。
ただし、不育症の半数以上は原因不明です。しかも、中には両親どちらかに染色体異常があるケースなど、せっかく原因が見つかっても対策の打ちようがない場合もあります。それでも、投薬治療などで乗り越えられるケースがある以上、原因を探ってみる価値は十分あるでしょう。
ホルモンの分泌異常(黄体機能不全、高プロラクチン血症、甲状腺機能障害)
検査方法 | いずれも血液検査で調べることができます。 |
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治療 | 投薬治療。なお、甲状腺機能障害については、専門医との連携が不可欠です。 |
子宮環境の問題(子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、子宮腺筋症、中隔子宮や双角子宮の形態異常など)
検査方法 | 超音波検査、子宮卵管造影、子宮鏡検査、腹腔鏡検査、MRIなどを使って、子宮内に着床や胎児の成長の妨げになりそうなものがないかを探ります。 |
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治療 | 外科手術で切除します。子宮ポリープや粘膜下筋腫などは、開腹せずに子宮鏡下で手術することも可能。 |
高血糖(糖尿病)
検査方法 | 空腹時に血液検査を行なって、糖尿病などの代謝異常が起こっていないかを調べます。 |
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治療 | 内科でのインシュリン治療で、無事に妊娠を継続し、出産できるケースもあります。インシュリンは胎盤を通りませんので、安心して治療を受けてください。 |
クラミジア感染症
検査方法 | 夫婦2人から採血して、抗原抗体検査を行ないます。 |
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治療 | 夫婦間で移し合うピンポン感染を防ぐため、必ず2人同時に抗生物質での治療を行ないます。治療を終えてから、妊娠を目ざします。 |
自己免疫疾患による血流障害(血液が固まりやすい抗リン脂質抗体がある)
検査方法 | 血液検査で抗体の有無や、血液の固まりやすさなどを調べます。 |
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治療 | 血栓が絨毛や胎盤にできると、胎児に十分な量の酸素や栄養が回らなくなってしまうため、血液の凝固を防ぐ低用量アスピリン療法やヘパリン療法などを、妊娠確認後に行ないます。 |
両親のどちらかに染色体異常がある
検査方法 | 夫婦2人の血液検査を行ないます。 |
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治療 | 一定の確率で、胎児に染色体異常が発生します。まずは、遺伝カウンセリングを受けてみましょう。 |
「自分の中に灯った命の火が消える」という寂しさ、「また、失うかもしれない」「また、心や体をえぐりとられるかもしれない」と思いながら妊娠を目ざすことの怖さは計り知れないものがあると思います。それでも、続けて2回以上流産したケースでも、次の妊娠では約60%が、無事に赤ちゃんを抱くことができていているのです。どうか悲観的になることなく、勇気を持って妊娠してください。