うまく孵化できない胚は着床できません。
卵の殻の部分にあたる透明帯を薄くして、孵化を助けるのがAHAです
体外受精や顕微授精がうまくいかないのは、着床に問題がある場合が多いのです。残念ながら着床に関しては、まだわかっていない点が多く、確実に着床させるような技術はありません。
そのような着床障害の原因のひとつには、胚が透明帯(ニワトリの卵でいえば殻の部分)をうまく破れずハッチング(孵化)できないケースが含まれているといわれています。ハッチングした胚の中身が子宮内膜にもぐり込んで、はじめて着床が成立するのですから、うまく出てこられないことには着床はありえません。
そこでハッチングが起こりやすいように、移植前の胚の透明帯にあらかじめ穴を開けたり薄くしたりしておこう!というのが、孵化補助(AHA/アシステッド・ハッチング)と呼ばれる作戦です。現在世界中の多くのART実施施設で行われており、安全性は確立しています。
レーザーによるAHA
当クリニックでは、レーザーを使って透明帯を削るアシステッド・ハッチングを行っております。従来の方法とくらべ、操作がより素早く正確に行えること、操作の際に卵に与えるダメージがまったくないなどの点で優れています。現在まで、かなりの症例が国内、海外あわせて積み重ねられていますが、その中では胚への悪影響などは報告されておりません。
写真(画面上部の平にカットされたような部分がAHAを施した箇所)
これが孵化し終わった胚盤胞です(採卵6日後)
透明帯をやぶって出てきた胚の中身(上)は、子宮内膜の中へと、まるで植物が大地に根をはるように絨毛(胎盤のもと)になる部分をもぐり込ませていきます。こうして着床した胚は、妊娠10週に胎児と名前を変えるまで“胎芽”と呼ばれます。みなさんの身体の中にも、一日も早く赤ちゃんの命が芽吹きますように。