ZyMōtスパームセパレータ―とは
ZyMōt (ザイモート) スパームセパレーター (以下ZyMōt) は顕微授精 (ICSI) における新たな精子の選別方法です。通常、顕微授精の精子選択は、その形状や運動性を「見た目」で判断して行っています。しかし、精子のDNA損傷は見た目ではわかりません。この精子のDNA損傷が培養3日目以降の発育不良 (胚盤胞到達率の低下) や妊娠率の低下、妊娠後の流産率の上昇に関与していることが報告されています。ZyMōtを使用することによりDNA損傷の少ない精子の選別が可能とされています。
従来法 (密度勾配遠心法)
従来法は特殊な液体の上に精液をのせ、遠心分離します。
これにより精液中の不動精子や細菌を除去して良好な精子だけを集めます。
遠心分離の物理的なダメージによってDNA損傷が引き起こされます。
また、精子の細胞質が破壊され、活性酸素が発生し、その酸化ストレスによってもDNA損傷が引き起こされます。
DNA損傷は受精後、卵子側の修復機能によって修復が起こるとされています。しかし、胚の発生がうまくいかない方や習慣性流産の方ではこの修復機能が低下している可能性があります。そのため、DNA損傷の起こっていない精子を選択することが重要となります。
ZyMōt (ザイモート)
特殊な液体や遠心分離機を使用せずに、短時間で良好な運動精子を回収できるデバイスです。
精液チャンバーと回収チャンバーがメンブレン (膜) によって仕切られています。メンブレン (膜)には8μmの小さな穴が開いており、精液注入口から精液を入れると、前進運動性の高い精子がメンブレンを通って回収チャンバー側へ泳ぎあがってきます。それを精子回収口から回収します。
精子の前進運動性が高いとDNA損傷が少ないという報告があります。そのため、ZyMōtによりDNA損傷の少ない精子の選別が可能です。
ZyMōtおよびPICSIのメリットおよびデメリットについて
メリット | デメリット | |
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ZyMōt | DNA損傷の少ない精子の選別が可能。 | 運動精子が少なく、精子の回収が困難な場合は従来法での回収になる。 |
PICSI | DNA損傷の少ない精子の選別が可能。ZyMōtよりも運動精子が少ない症例でも使用可能。 | ヒアルロン酸にくっついている精子が少ない場合は選別が困難である。 |