- 『AMH(抗ミューラー管ホルモン)』は、加齢とともに減少する
- 体外受精などのARTに進むタイミングであれば1回のみ保険治療で受けられる
- AMHを測ることで、卵巣の排卵誘発剤への反応性が推測できる
- AMHが低くても、卵子の質が悪いとは限らない
AMHを測ることで、卵巣の排卵誘発剤に対する反応を予測。
体外受精に進むタイミングであれば1回のみ保険治療扱いになります
どんな検査?~卵巣の予備能がわかるホルモンAMH~
『AMH(Anti-Mullerian Hormone/抗ミューラー管ホルモン)検査』は、通常のホルモン検査と同様に、血液検査となります。
AMH検査は、体外受精などのARTに進むことを決めたタイミングで行う際(以後6ヶ月毎に1回まで)のAMH検査は、保険治療での実施が認められていますが、それ以外のタイミングで行う場合は自費治療扱いとなります。
卵巣内にストックされていた原始卵胞が目を覚まして・・・
卵子という細胞が、その女性が胎児だった頃につくられたものだということをご存じですか? 減数分裂の途中の未熟な卵子は、袋に包まれた原始卵胞と呼ばれる状態で、長期間、卵巣内にストックされているのです。やがて、原始卵胞の一部が、排卵を目指して成長をはじめますが、そのほとんどの卵胞が閉鎖(すなわち細胞死)という運命をたどります。
たった1個の卵子を排卵させるため、実はたくさんの卵胞が消費されているのです。
AMHは、成長途中の小さな卵胞から出ているホルモン
AMHは、このような成長過程の卵胞である前胞状卵胞(2周期後にようやく排卵サイクルに入る可能性のある、小さな卵胞)内の顆粒膜細胞(卵子の周りを取り囲んでいる細胞)で、おもにつくられているホルモンです。卵巣に存在する前胞状卵胞が多いと、その分、AMHを産生する顆粒膜細胞も多くなり、AMHの値も高くなります。卵巣内の発育可能な卵胞数は、年齢とともに減少しますので、AMHの値も加齢によって、誰しもが低下していくことになるのですが、年齢ごとに見ますと値にかなりの個人差があることがおわかりいただけると思います(グラフ1)。
グラフ1:奥さまの年齢とAMH値 ※2018.1~2020.2の間で598名の測定値
卵巣の反応性を示すホルモン、AMHとFSH
これまでは、卵巣の機能を評価する指標として、血液中の『FSH(卵胞刺激ホルモン)』の値が用いられてきました。FSHは、胞状卵胞(前胞状卵胞の次の成長段階)以降の卵胞を発育させる働きを持つ、下垂体から分泌されるホルモンで、卵巣の反応性が落ちてくると上昇する傾向にあります。ただし、月経周期内でも値が大きく変動してしまうため、FSHだけで卵巣機能を評価するのは、やや難しい側面もありました。
ところが、このAMHならば、月経周期内の値がほぼ一定しているため、卵巣の予備能をより正確に評価することができると考えられています。
いつするの?
月経周期中のどのタイミングでも測定可能。ただし、当クリニックでは、保険治療でAMHを測る場合は、そのほかのホルモンの基礎値を調べる検査と時期を合わせ、月経周期3~5日目頃に実施しているケースがほとんどです。
何がわかるの?
排卵誘発剤に、卵巣にどのくらい反応するかが予測できる
AMHの値から、排卵誘発剤による卵巣刺激によって、卵巣内に発育を開始できる卵胞がどのくらいあるのかを予測することができます。卵巣刺激の方法を決定する際にも、参考にすることができると考えられています。
『山下レディースクリニック』では、採卵回数を減らし、母体への負担を減らすためにも、AMHの値と月経初期に見える卵胞の数から、複数の卵が得られそうな方には、【PPOS+点鼻薬トリガー法】をおすすめしています。
こちらのグラフ2は、当クリニックで初めて採卵を行った方の平均採卵数とAMH値の関係です。
グラフ2:当院で初めて体外受精・顕微授精を行った方の採卵数とAMH値との関係(2015年4月~2018年4月)
AMHが2.5~3.49ng/mlの方は、平均11個採れています。グラフ1でお示ししたように10個~14個とれた方は、1度の採卵で、全年齢で60%以上、年代によっては80%近くが妊娠に至っています。
奥さまのご年齢や不妊期間、二人が抱える不妊原因によっては、AMHの値が下がってしまう前に、より多くの採卵数を目指して、早めのARTに踏み切ることが、患者さまの最終的に妊娠・出産できるまでの総費用、費やす時間や労力、そして何より精神的負担などを最小限に抑えることにつながると考えます。
AMHの値と卵子の質の間に、直接の相関関係はない
なお、「AMHの値が低いからといって、卵子の質が低いとは限らない」ので、この点はご安心ください。確かに、加齢とともにAMHの値が低くなり、高齢の方ほど卵子の質が低下している傾向にありますので、一見、関係がありそうに見えますが、直接の強い相関はないと考えられています。
保険治療で受けられる不妊検査
- 基礎体温
- ホルモン検査
- 子宮卵管造影
- 超音波検査
- 精液検査
- 頸管粘液検査&ヒューナーテスト
- クラミジア検査 ※子宮頸管炎が疑われる場合
- AMHの血液検査 ※ART開始時。以後6ヶ月に1回まで
- HOMA-R(インスリン抵抗性)検査
- 子宮鏡検査 ※子宮内ポリープなどが疑われる場合
- 腹腔鏡検査 ※子宮内膜症などを疑う場合
- 泌尿器科での男性不妊検査
自費治療になる検査
- 抗精子抗体検査
- 風疹抗体&感染症検査